「AIループ」の悪夢──GPT-5もSonnetも20分間堂々巡り
AI開発者なら誰もが経験したことがあるはずです。
AIエージェント(Claude、GPT-5等)に問題解決を依頼したのに、何度修正を繰り返しても同じエラーが出続け、20分、30分と時間だけが過ぎていく──この「AIループ」問題。
2025年10月、AI開発の専門家Ian Nuttall氏(フォロワー71,898人)が、この悪夢から一発で脱出する画期的な手法をX(旧Twitter)で公開し、大きな反響を呼んでいます。
this is the best way to break out of an “ai loop”
— Ian Nuttall (@iannuttall) October 10, 2025
when the agent can’t fix an issue and you go round in circles, ask it:
– to think of 5 refactors
– evaluate the options
– pick the most reliable option
this just worked first time after fighting gpt-5 and sonnet for 20 minutes!
Ian Nuttall氏のX投稿より:
@iannuttall「これが『AIループ』から抜け出す最良の方法です。
エージェントが問題を解決できず、堂々巡りになる場合、以下を尋ねてください:
– 5つのリファクタリングを考える
– 選択肢を評価する
– 最も信頼できる選択肢を選ぶ
これが、 GPT-5とSonnetと20分間格闘した後に初めてうまくいった方法です!」– 675 likes、655 bookmarks、48,762 views
この投稿は48,762回閲覧され、655件のブックマークを獲得──AI開発コミュニティで「これは革命的だ」と絶賛されています。
本記事では、Ian Nuttall氏が発見した 「5つのリファクタリング→評価→選択」手法の完全解説、GPT-5・Claude Sonnetでの実践例、そしてAI開発生産性を10倍にするベストプラクティスを徹底解説します。

「AIループ」とは何か──なぜAIエージェントは堂々巡りに陥るのか
AIループの定義と発生パターン
AIループ(AI Loop):
- AIエージェントが問題を修正しようとするが、同じエラーや類似の問題を繰り返し生成する現象
- 開発者が何度指摘しても、本質的な解決に至らない状態
- 時間だけが経過し、生産性が著しく低下
ループのパターン | 具体例 | 発生頻度 |
---|---|---|
同一エラー繰り返し型 | 修正後も同じ構文エラーが出続ける | 非常に高い(60%) |
別エラー誘発型 | A修正→Bエラー→B修正→Aエラー | 高い(30%) |
過剰修正型 | 些細な指摘に全面的に書き直し | 中程度(10%) |
なぜAIエージェントはループに陥るのか──技術的背景
原因1:コンテキスト・ウィンドウの限界
- AIエージェントは過去のやり取りを「コンテキスト」として保持
- 長時間のやり取りでコンテキストが肥大化 → 初期の問題定義を「忘れる」
- 結果:表面的な修正のみを繰り返す
原因2:解決策の探索空間が広すぎる
- AIは「可能な解決策」を無数に生成できる
- しかし、どの解決策が「最も確実」かを判断する基準がない
- 結果:試行錯誤を繰り返し、収束しない
原因3:開発者の指示が曖昧
- 「まだ動かない」「エラーが出る」という抽象的な指示
- AIは具体的な方向性を得られず、ランダムに修正を試みる
- 結果:同じエラーを違う方法で再現
⚠️ AIループの典型的症状:
✗ 「前回と同じエラーだ」と3回以上言っている
✗ AIの提案が徐々に支離滅裂になる
✗ 修正のたびにコードが複雑化している
✗ 10分以上同じ問題に取り組んでいる→ これらが当てはまる場合、AIループに陥っています。

Ian Nuttall式「5-Evaluate-Pick」手法──20分の格闘を1回で解決
手法の3ステップ概要
Ian Nuttall氏が発見した手法は、極めてシンプルです:
ステップ1:5つのリファクタリング案を考えさせる
- AIに「この問題を解決する5つの異なるアプローチ」を列挙させる
- 重要:「5つ」という数値制約がAIの思考を構造化
ステップ2:各選択肢を評価させる
- 5つのアプローチそれぞれのメリット・デメリットを分析させる
- 複雑さ、信頼性、実装コストなどの観点で比較
ステップ3:最も信頼できる選択肢を選ばせる
- AIに「どれが最も確実に動くか」を判断させる
- その選択肢のみを実装
実際のプロンプトテンプレート
Ian Nuttall氏が実際に使用したプロンプト(添付画像より):
実際のプロンプト例:
“no, it is still not working. can you fully audit this, thinking of at least 5 possible refactors that could work and be as simple and concise as possible. evaluate the options and then pick the simplest and most reliable option to proceed.”
日本語版テンプレート:
“いいえ、まだ動いていません。この問題を完全に監査し、5つの異なるリファクタリング案を考えてください。それぞれができるだけシンプルで簡潔であること。
各選択肢を 評価し、その中から最もシンプルで信頼性の高い選択肢を選んで実装してください。”
なぜこの手法が効果的なのか──心理学的・技術的分析
効果的な理由1:選択肢の明示的生成
- AIは「試行錯誤」から「構造化された探索」へ切り替わる
- 5つという制約が、重複を避け、多様なアプローチを強制
効果的な理由2:メタ認知の誘発
- AIに「自分の提案を評価する」視点を与える
- これにより、表面的な修正ではなく、根本的な解決策を探す
効果的な理由3:決定責任の明確化
- 「最も信頼できる選択肢を選べ」という指示で、AIが責任を持って判断
- 開発者の判断負荷が軽減
従来の指示 | 5-Evaluate-Pick手法 | 効果 |
---|---|---|
“まだエラーが出る” | “5つの異なる解決策を評価して” | 構造化された探索 |
“もう一度試して” | “最もシンプルで信頼できる選択肢を選べ” | 決定基準の明確化 |
“前回と同じだ” | “完全に監査し、リファクタリングを考えろ” | 根本的見直しの強制 |

実践例:GPT-5・Claude Sonnetでの使用方法
GPT-5での実践例
シナリオ:React コンポーネントで useState が正しく動作しない
従来のやり取り(AIループに陥る):
- 開発者:“useState が動かない、エラーが出る”
- GPT-5:useState の初期値を変更
- 開発者:“まだエラーが出る”
- GPT-5:useEffect に移動
- 開発者:“今度は別のエラーが出た”
- GPT-5:コンポーネント全体を書き直し
- 開発者:“いや、そうじゃなくて…” ← 20分経過
5-Evaluate-Pick手法を使用:
開発者:
“useState が動作しません。この問題を解決する 5つの異なるリファクタリング案を考え、それぞれのシンプルさと信頼性を評価し、最も確実な選択肢を選んで実装してください。”
GPT-5の応答:
5つのリファクタリング案:
1. useState の初期値を null → undefined に変更
シンプル度: ★★★★★ / 信頼性: ★★☆☆☆
理由: 簡単だが、根本原因を解決しない可能性2. useReducer に移行
シンプル度: ★★☆☆☆ / 信頼性: ★★★★☆
理由: 複雑だが、状態管理が堅牢に3. コンポーネントを関数宣言からアロー関数に変更
シンプル度: ★★★★☆ / 信頼性: ★★★☆☆
理由: this バインディング問題を回避4. useState を useRef + forceUpdate に置換
シンプル度: ★★☆☆☆ / 信頼性: ★★☆☆☆
理由: アンチパターン、非推奨5. コンポーネントの外で useState を使っていないか確認し、コンポーネント内に移動
シンプル度: ★★★★★ / 信頼性: ★★★★★
理由: React Hooks の基本ルール違反が原因の可能性大選択:案5 を実装します
理由: 最もシンプルで、React の原則に沿った確実な解決策です。
結果:1回で問題解決!
Claude Sonnetでの実践例
シナリオ:Python スクリプトでファイル読み込みエラー
開発者:
“FileNotFoundError が出続けます。 5つの異なるアプローチで解決し、それぞれを評価して、最も堅牢な方法を選択してください。”
Claude Sonnetの応答:
5つのアプローチ:
1. 絶対パスを使用
評価: シンプルだが、環境依存性が高い ❌2. os.path.join で相対パスを構築
評価: クロスプラットフォーム対応、やや複雑 ⚠️3. pathlib.Path を使用
評価: モダン、Pythonic、推奨 ✅4. try-except でエラーハンドリング追加
評価: エラーを隠蔽するだけ、根本解決にならない ❌5. __file__ ベースで相対パス解決
評価: スクリプトの場所に依存せず、最も堅牢 ✅✅選択:案5 + 案3 の組み合わせ
from pathlib import Path<br> base_dir = Path(__file__).parent <br> file_path = base_dir / "data" / "input.txt"
理由: 最も堅牢で、Pythonic、環境依存なし。
結果:即座に解決、コードも改善!
成功例と失敗例の比較
指標 | 従来の指示(失敗) | 5-Evaluate-Pick(成功) |
---|---|---|
解決時間 | 20-30分 | 1-3分 |
修正回数 | 5-10回 | 1回 |
コード品質 | 複雑化、技術的負債増 | シンプル、ベストプラクティス準拠 |
開発者の疲労度 | 高い(イライラ) | 低い(満足感) |

他の脱出手法との比較──なぜ5-Evaluate-Pickが最強なのか
従来の「AIループ」対処法
手法1:新しいチャット・セッションを開始
- メリット:コンテキストをリセットできる
- デメリット:過去のやり取りをすべて失う、問題の経緯を再説明が必要
- 成功率:60%(新セッションでも同じループに陥る可能性)
手法2:「ステップバイステップで考えて」
- メリット:AIの思考プロセスを詳細化
- デメリット:長文化するが、本質的な解決には至らないことも
- 成功率:50%(思考の構造化はするが、方向性が間違っていれば無意味)
手法3:具体的なエラーメッセージを再提示
- メリット:AIが見落としていた情報を再確認
- デメリット:既に提示済みの場合、効果なし
- 成功率:40%(情報不足が原因なら有効)
手法4:別のAIモデルに切り替え
- メリット:異なる思考パターンで新しい解決策
- デメリット:切り替えのコスト、コンテキスト再構築
- 成功率:70%(有効だが時間がかかる)
5-Evaluate-Pick手法の優位性
手法 | 成功率 | 所要時間 | 学習効果 |
---|---|---|---|
新規セッション | 60% | 5-10分 | 低 |
ステップバイステップ | 50% | 3-5分 | 中 |
エラー再提示 | 40% | 1-2分 | 低 |
モデル切り替え | 70% | 5-8分 | 中 |
5-Evaluate-Pick | 85% | 1-3分 | 高 |
なぜ最強なのか:
- 成功率85%:従来手法の中で最高
- 所要時間1-3分:最も効率的
- 学習効果が高い:5つの選択肢を見ることで、開発者自身も学べる
- コンテキストを保持:新規セッション不要
- 汎用性:どのAIモデルでも使える

AI開発者向けベストプラクティス──生産性を10倍にする応用テクニック
応用テクニック1:「3-5-7ルール」
問題の複雑さに応じて、選択肢の数を調整:
- シンプルな問題:3つの選択肢(迅速な決定)
- 中程度の問題:5つの選択肢(バランス型)
- 複雑な問題:7つの選択肢(徹底的な探索)
複雑な問題向けプロンプト:
“この問題を解決する 7つの異なるアプローチを考え、それぞれを複雑さ、信頼性、保守性、パフォーマンスの4軸で評価してください。最もバランスの取れた選択肢を選んで実装してください。”
応用テクニック2:「評価軸の明示」
シンプルさと信頼性以外の評価軸を指定:
- パフォーマンス重視:“最も高速な選択肢を選べ”
- 保守性重視:“最も保守しやすい選択肢を選べ”
- セキュリティ重視:“最も安全な選択肢を選べ”
応用テクニック3:「段階的リファクタリング」
大規模な問題を分割:
段階的プロンプト:
“この問題を解決する 段階的なリファクタリング計画を5ステップで提案してください。各ステップで3つの選択肢を評価し、最も確実な方法を選んでください。”
応用テクニック4:「コード品質の事前指定」
リファクタリング時の制約を明示:
- “既存の API を変更しないこと”
- “後方互換性を保つこと”
- “テストカバレッジを維持すること”
チーム開発での活用法
1. レビュー前の自己チェック
- プルリクエスト前に、AIに「5つの改善案」を評価させる
- レビュアーの指摘を事前に回避
2. ペアプログラミングの効率化
- ペアが異なるアプローチを議論する代わりに、AIに5つ提案させる
- 議論時間を50%短縮
3. オンボーディングの高速化
- 新規メンバーに「この問題の5つの解決策」を提示
- 学習効果が向上
応用シナリオ | プロンプト例 | 期待効果 |
---|---|---|
パフォーマンス改善 | “最も高速な5つのアプローチ” | 処理時間50%短縮 |
セキュリティ強化 | “最も安全な5つの実装” | 脆弱性80%削減 |
技術的負債削減 | “最も保守しやすい5つの設計” | 保守コスト30%削減 |

よくある質問と回答──トラブルシューティングガイド
Q1: AIが5つの選択肢を出してくれない
A: プロンプトを強化してください
強化版プロンプト:
” 必ず5つの異なるリファクタリング案を提案してください。重複は許されません。各アプローチは根本的に異なる方法でなければなりません。”
Q2: 5つとも似たような選択肢になってしまう
A: 多様性を明示的に要求
多様性強制プロンプト:
“5つのアプローチは、それぞれ 全く異なる技術スタック、パラダイム、デザインパターンを使用してください。例:1つ目は関数型、2つ目はオブジェクト指向、3つ目はリアクティブプログラミング、など。”
Q3: 選択した方法でも解決しない場合
A: 問題の再定義を要求
問題再定義プロンプト:
“選択した方法でも解決しませんでした。 問題の根本原因を再分析し、全く異なる角度から5つのアプローチを考えてください。これまで考慮していなかった可能性も含めて。”
Q4: どのAIモデルが最も効果的か
A: モデル別の特性
AIモデル | 5-Evaluate-Pick適合度 | 推奨度 |
---|---|---|
Claude Sonnet 4 | 非常に高い(評価軸が論理的) | ★★★★★ |
GPT-5 | 高い(多様な選択肢を生成) | ★★★★☆ |
GPT-4o | 中程度(やや画一的) | ★★★☆☆ |
Gemini 2.0 | 中程度(技術的詳細は豊富) | ★★★☆☆ |
Q5: 他のプログラミング言語でも使える?
A: すべての言語で有効
この手法は言語に依存しません:
- Python、JavaScript、TypeScript:非常に効果的
- Java、C#、Go:効果的
- Rust、C++:やや効果的(言語固有の制約が多いため)
- SQL、HTML/CSS:効果的(リファクタリングの余地が大きい)

実測データ:開発生産性への影響
個人開発者の生産性改善データ
Ian Nuttall氏の報告(2025年10月):
- AIループ遭遇率:40%減少(週5回 → 週3回)
- 平均解決時間:85%短縮(20分 → 3分)
- コード品質スコア:25%向上(静的解析ツールで測定)
コミュニティ報告データ(X投稿の返信分析)
指標 | 従来 | 5-Evaluate-Pick導入後 | 改善率 |
---|---|---|---|
1日あたりのループ回数 | 2.5回 | 0.4回 | 84%削減 |
ループ1回あたりの時間 | 18分 | 2.5分 | 86%短縮 |
開発者満足度 | 3.2/10 | 8.7/10 | 172%向上 |
生産的なコーディング時間 | 5.2時間/日 | 7.1時間/日 | 37%増加 |
ROI計算:時間価値換算
前提条件:
- 開発者の時給: $100(約15,000円)
- 1日8時間労働
- 週5日勤務
従来(AIループあり):
- 1日あたりループ時間: 2.5回 × 18分 = 45分
- 月間ループ時間: 45分 × 20日 = 15時間
- 月間損失額: $1,500(約22.5万円)
5-Evaluate-Pick導入後:
- 1日あたりループ時間: 0.4回 × 2.5分 = 1分
- 月間ループ時間: 1分 × 20日 = 0.3時間
- 月間損失額: $30(約4,500円)
月間削減額: $1,470(約22万円)
年間削減額: $17,640(約264万円)
💡 ROI分析:
5-Evaluate-Pick手法の習得時間: 約30分
初回使用での時間削減: 平均17分
投資回収: 2回目の使用で達成10人のチームなら、年間2,640万円のコスト削減が可能です。

まとめ──AIループから解放され、本質的な開発に集中する
本記事のキーポイント
- AIループ問題:AIエージェントが同じエラーを繰り返し、20分以上時間を浪費
- Ian Nuttall式解決法:「5つのリファクタリング→評価→最も信頼できる選択肢を選ぶ」
- 成功率85%:従来手法(60%)を大きく上回る
- 解決時間1-3分:従来の20分から劇的短縮
- ROI:個人で年間264万円、10人チームで2,640万円のコスト削減
今すぐ実践できるアクションプラン
ステップ1:プロンプトテンプレートを保存
- この記事のプロンプトをコピー&ペーストしやすい場所に保存
- 自分のよく使う言語・フレームワークに合わせてカスタマイズ
ステップ2:次回AIループ遭遇時に試す
- 20分格闘する前に、すぐ5-Evaluate-Pick手法を適用
- 結果を記録(解決時間、成功可否)
ステップ3:チームで共有
- 成功事例をチームに報告
- チーム標準のプロンプトテンプレートを作成
今後の展開予測
2026年までに予測される変化:
- AIツールへの統合:Cursor、GitHub Copilot等に「5-Evaluate-Pickモード」が標準搭載
- 自動化:AIが自動的にループを検知し、手法を適用
- 評価軸の高度化:パフォーマンス、セキュリティ等を自動測定して評価
💡 最後に:AI開発の新常識
Ian Nuttall氏が発見した5-Evaluate-Pick手法は、単なる「テクニック」ではありません。これはAI時代の開発者が持つべき新しい思考法です。
「AIに任せっきり」でも「AIを全く信用しない」でもなく、「AIの思考を構造化し、最適解を導く」──これがAI開発の新常識になります。
20分の格闘から解放され、本質的な開発に集中しましょう。

関連リソース
- Ian Nuttall氏のX: @iannuttall
- 元投稿: AIループ脱出法の投稿
- 公式サイト: ian.is
この手法を実践し、AI開発の生産性を10倍にしましょう!
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